七瀬について

exterior2006-12-17

筒井康隆『旅のラゴス』読了。

七瀬三部作はよく言われるように、それぞれ趣きが異なる。一作目では家族内で蠢く、避け難く醜悪な人間の心理を描くことが主題になっている。ニ作目では顔の見えない国家的規模の組織に七瀬ら能力者が追い詰められる中で、逆に彼らが抱く弱さや葛藤が描かれる。三作目では国家からさらに宇宙へぶっ飛び、超越者と母という存在がある種グロテスクなかたちで重ねられる。しかし、このシリーズの面白さの一つであるテレパスの能力がいかに描かれるかという点においては一作目と三作目がとくに面白い。一作目で登場した、水密桃や幾何図形など心的機構内部に映る視覚的表象は、三作目において文字どおり紙面で放射状階段状に現れる言葉、つまり文字の意味よりも図像的形象的意味が重要であるイメージとしての言葉として変奏される。また、怒濤のように沸き起こる心の「声」の圧倒的な量や速さを、()を通して言葉を断片化し羅列することで描いている箇所も面白い。
さっき、ミステリチャンネルで偶然『七瀬ふたたび』多岐川裕美版の放映を発見した。七瀬が読心能力を使って聞き取った「声」の挿入が唐突でわかりにくかったり、やたら人物のアップが多かったりと残念な面も多いが、チープな感じは非常に好感が持てた。甲板から突き落とされた女性がマネキンだし、それをヘンリーの念動力で浮かばせるシーンはそのまんま逆回しにしただけだったし、タイムトラベルのシーンではお定まりの時計のショットが挿入されるし。むしろ心地良い。あと多岐川裕美がきれい過ぎる。テレビに見入っていると、多岐川裕美は頬か肌がどうだかで丸く見えるのでちょっとでも太ったら事務所から檄が入ったというどうでもいい情報を妹から教わる。昔見た水野真紀版をもう一度見たい。たしか内田有紀の『時をかける少女』で時間旅行者役だった袴田吉彦が予知能力者の恒夫役だった。「ではこの娘は最終的な超能力者。」ていう台詞にぐっとくる。