「ピョン!」

exterior2005-06-09

大阪新今宮駅前にはセンター(あいりん労働福祉センター)と呼ばれる施設が存在する。夕方5時過ぎころにその辺りを通りかかると何百人もの日雇い労働者が列を成していた。数メートル進んでは止まり、進んでは止まりしていた。巨大な造船所のような鉄色の建物の周囲を取り囲んでもまだ余るほどの列。さらにその列を取り巻くような形で路面で飲食物やら雑誌やら、屑を並べている人々もいる。センターの職員が無表情に列を整理し、促している。まるで『1984』(マイケル・ラドフォード)のようだ、と思った。カメラを持っていたが、血気盛んな集団が大きな声で喚き始めたので、恐ろしくてレンズを向けられなかった。時代が止まったかのような、という言葉があるが、ここではふさわしくない。彼らもまた30年前は青年だった。この時代に生まれて死んでいく。30年前には今はいない今とは別の彼らがいたのだろう。確かに時代は流れている。境界線を管理しているのがぼくら自身かもしれないという点。そこから少し離れると、一泊五百円とかの安宿が点在する。路上には中高年男性が数メートル間隔で座り込み、夕刻の時間を引き延ばしている。また、三駅分ほど歩いて電車に乗る。車窓からぼんやりとした夕日が見える。