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exterior2005-06-07

東京巡礼vol.3
銀座、地上に出たところ(おそらくA12出口)、松屋の前で友人Sと落ち合う。昨年の秋以来半年ぶりの再会。スタバに入り、アイスコーヒーを注文する。sはコーヒーフラぺチーノ。20分ほどで話して、店を出、友人のバイト先である映画館に向かう。ジム・ジャームッシュ『コーヒー・アンド・シガレッツ』を観る。外見には様々でも、善良で悪意のない人々の会話。成立しているはずの会話が、その実不理解と不一致の連続だということのおかしみ。コント的。モノクロ―市松模様の舞台装置、コーヒー、タバコ。編集による時間の飛躍がなく、状況設定ごとの展開とその繋ぎかたが特徴的なジャームッシュのスタイルは演劇的なのかもしれない、と思う。映画館を後にしてそのまま銀座の焼き鳥屋に行く。従業員の愛想がよすぎて気持ち悪い。店を出ると雨が強くなっている。その後、氷川台の駅前にある居酒屋でおでんや焼酎をいただく。雨は衰えない。急いで友人宅へ。彼は知っている限りでも2回引っ越している。神戸、横浜、練馬と場所も違えば間取りも違うのに、部屋に入ったときの印象は全く変わらない。こうなると住み替えでなく住み変えだ。ともかく早々に床に着く。
四日目。翌日は銀行を探してから氷川台駅前で朝マック。一路中野へ向かう。電車を下り、商店街を抜けると名高い“ブロードウェイ”が現れる。意外に普通かと思いきや、階を上がることに「まんだらけ」率が上がり、原画、フィギュア、と特化していく。残念ながら開店準備中の店舗がほとんどで、ウィンドウ越しだったが、初心者には丁度よかったかもしれない。彼らは暗闇の中を動くのだ。次回は入店しよう。付け加えるなら、四階など八割方シャッターは下り、まんだらけの対角線上でアイスクリーム屋が営業していたし、占星術だか錬金術本だかの専門店もあった。現実はフィクションより不条理である。
中野から高円寺、阿佐ヶ谷と歩く。友人が、阿佐ヶ谷に引っ越すことを決意する。ラピュタ阿佐ヶ谷の場所を駅前交番で聞き、向かうも、上映時間が噛み合わず、断念。浅丘ルリ子ユーリ・ノルシュテインの特集が組まれていた。駅に戻る途中の定食屋にて鯖味噌定食を食する。「ごきげんよう」が流れていた。
初台に向かい、今回ニ度目のICC。tsunamii.netによる《ヴァーチャル・マラソン》。何千回もタイプさせられるが、これってほんとに身体性を扱っているといえるのか(内原恭彦「うて、うて、考えるな。」で感じた疑問と似ている)。福原志保+ゲオルク・トレメル《バイオプレゼンス 2055》はヒトの遺伝情報を木に保存するというプロジェクト。展示は歪曲したビニールハウスのような空間の中に、ひと型の芽が生えているというもの。感性的な次元での経験を問題にしているような作品と、生命倫理を問題にしているような作品が並んでいることに対して違和感を感じなくなってきている。相対主義の臨海点。その後は恵比須の写真美術館に向かう。
『超[メタ]ヴィジュアル―映像・知覚の未来学』福田美蘭《Camera Eye》や各種視覚装置を直に眼にできたことは収穫だが、新作がほとんどなく教科書的な印象。それでも岩井俊雄の《時間層?》はやっぱりすごかった。衝撃。美術館を出る頃には夕方に近づき、空気も穏やかなものに変化している。ふと見渡せばまたしても東京タワー(らしきもの)が遠くに見える。果たしてタワーかどうか確認しよう、ということになりまた歩き始める。道中ニ本目の東京タワーの所在について聞く。間もなく白金に至る。夕方、少年が下町の路上に立っている。いつか映画で観たような東京の風景。青山だか赤坂だかで中央図書館に入る。つい読み込みそうになるが、バスの時間が近づいている。輸入パン屋でパンを食べる。ほとんど日が落ちた町を広尾まで歩き、銀座へ。松屋でお土産を購入し、有楽町へ向かう。無印のキオスクを脇目に焼肉屋に入る。食事後東京駅まで高架沿いに歩く。丸ビルでコーヒーを買う。友人に見送られて、バスに乗り込む。ひたすら歩いた三日間であった。ともに歩いてくれた友人らに感謝。