日本のベニス

exterior2005-05-04

国立国際美術館で開催中の『シュテファン・バルケンホール展』『コレクション1』に行く。現代美術を芸術たらしめる要素としてかならずしも「美しさ」や「快さ」は必要では無いとされている。が、彼の作品は心地よく、なおかつ様々な問題を投げかけてくれる。一つには彫刻における台座の問題。以前に滋賀県美で観たブランクーシの『空間の鳥』の台座は、彫刻本体とは異なる素材で制作され、作家が同列のものとして扱っていたとしても鑑賞者の認識上では空間的に切り離されているように思う(ブランクーシのこの台座の内の幾つかは別の作品では『無限柱』として中心的存在となっている)。しかしバルケンホールの台座は人物像が切り出されたまさに同じ木材から、分断されることなく連続している。整形するのではなく素材である木材から木屑をはらい、像を取り出す..。もう少し考える必要がある。ブランクーシとの比較からは、美術館報でも論じられていたように「抽象と具象の混交」の問題も浮かび上がる。この点に関していうなら、ブランクーシの彫刻における主題と作品の関係は、象形文字と事物の関係に似ているように思う。つまり鳥という存在から「飛翔」という条件を選択し(この二者の関係が彼にとってどのようであったのかはよくわからない..)、逆方向のメタファーとして記号化する..。やはり行き詰まる。また、館内を巡っていて感じたのは彫刻作品を鑑賞する際の鑑賞者の動きが、作品である数体の男性像の姿勢にはぐらかされているような感覚である。手を組み、足を少し広げ、様々な角度から。さらに、画像(レリーフ)における奥行き知覚の問題や、画布との比較など興味深い問題が次々みつかる。これが130円とは。これ、読んでる人がいたら行ってみてください。是非。