「明晰なる意識のもと、自由意思によってこれを書く」

学校から帰り道。原付を飛ばしていると遠くで雷が光っている。音は届いてこない。日が短くなって、7時でも空はかなり暗く、積乱雲らしき雲の形は見えない。雷光がその輪郭を瞬間的に切り取って消える。歩道を子どもが大勢歩いている。小さい子どもは母親たちと一緒だ。みんな色とりどりのペンライトを手にしている。盆踊りかと思って、そのまま進むと小学校の前に「夕涼み会」の看板。夕涼み会。聞いているだけで暑さが和む気がする。歳事記にそのまま挿し絵とかになってそうな、ひとこま。

別役実『満ち足りた人生』読了。普通は社会的に非難されること、無価値だと考えられていることを、人生を彩る出来事だとして推奨していく、シニカルなユーモア。特に、読書、冒険、落馬、転居あたりが面白い。づくしシリーズもそうだけど、何か非常に常識的な部分や論理的に見える言葉遣い(〜ほかならない)の中にごく自然に嘘が入り込んでいると、常識と非常識の境界は限り無く曖昧になって、全体が滑稽でずれて感じるか、さもなければ全体を信ずるに足るものとしてしまう。コントのような一冊。