『結晶世界』より
通常の世界では、われわれは常に動きというものを生命及び時間の経過ということと関連させて考えてきたのですが、モント・ロイアルの近くの森でのわたしの経験では、すべて動きは必然的に死に通じ、時間は死の下僕にすぎないのだ、ということがわかりました。・・時間と空間の分離をもたらしたのは、おそらく、この世界の君主としてのわれわれ人類の比類ない大成果であったでしょう。ひとりの人間のみが時間と空間の両方にそれぞれ別個の価値と、それぞれを測る別個の尺度とを与えたのですが、その尺度がいまやわたしたちを棺桶の縦横のように規定し、束縛しているのです。
『昭和歌謡大全集』篠原哲雄(D)
