「いい娘になれよ」

バイト後、Tクンとシネマズで『どろろ』(監督 塩田明彦)を観る。
原作とは逐一逆のハッピーエンディングは、原作を知るものからすれば安直な印象を拭えない。また、衣裳や下町のセット、踊子の舞台、「賢帝歴3048年」などのアジアの色を残した世界観も若干ステレオタイプ化している気がする。意外に仮面ライダーっぽいアクションや、アイリスワイプなんかの旧い演出が配置されているのは面白かった。子供らの亡霊と百亀丸が妖怪を倒したのに、お前も妖怪じゃないのかと村を追い出されるシーン、体を取り戻すシーンは懐かしくてホロリと来た。小学校んときに、手塚治虫にはまって、毎晩「どろろ」とか「鳥人体系」を読み漁っていたときを思い出した。特に戦いを終える度に身体の一部を取り戻していくという設定は、産道から飛び出したときの衝撃を再体験するようですごい。初めて地面を踏み締め土の温度を感じたとき、初めて世界の色を知った百鬼丸どろろの顔に気付くとき、声帯を取り戻し豪雨の中どろろの名前を飽きずに叫ぶとき。気付いたときには備わっていた自分のこの五感でさえすごいと思うのに、その獲得を意識下で経験できるなんて。雨のシークエンスはほんとうによかった。

最近観た映画、『ダメジン』(監督 三木聡