二つのステージ

機が重なり、花園神社酉の市に行くことができた。友人の情報によると三の酉まである年はなかなか珍しいそう。目当てはもちろん見世物小屋。鳥居をくぐったそのすぐ左脇に小屋がある。入り口の頭上には絵看板があり、蛇女やらかなり際どい図柄が並んでいる。一人八百円の入場料は観た後に払うことになっており、そのまま入ると「異界へようこそ」の文字。趣きは丸尾末広の世界。ステージは奥に三つの小部屋をもち、赤い布で隠している。造花の装飾もある。下手には一段下がった一畳ほどの空間があり、そこは小屋の外にいる人からも見えるように窓があけられている。観客は入る前からその穴から出演者の怪しげな衣裳の女性の姿をかいま見せられる。ちょうど前の出し物が一通り終了したところで、すぐに話題のニューフェイス小雪太夫さんの蛇食いが始まる。予め頭部を切断した蛇を出し、本物であることを観客に確かめさせる。よく見ると小雪太夫さんの赤い着物の胸元に血のような体液のような飛び散った跡が見える。パンでも食べているような普通の表情で蛇にかぶりつく。骨やら皮やらを噛み砕くゴリゴリバキバキという音がよく聞こえる。飲み下し、次は鎖を鼻から口へ通してバケツを持ち上げるというもの。この目を背けたくなるような目を離せない好奇の感覚は何なのか。その後は空箱から蛇が出てきたり、さらに巨大なニシキヘビが出てきたりしたがちょうど脱皮の時期だったようで、ぐったりとしていた。帰りに巳の皮を貰い、見物料を払って出る。おそらくかつてはもっとたくさんの演目があり、出演者がいたのだろうが、現在では倫理的、経済的、政治的な諸事情によってこのような形で興行していると思われる。口上の女性がほとんど一人で話し、小雪太夫さんもその他の出演者もほとんど何も語らず、その女性の問いかけにうなずいたりするばかりである。出演者の芸ではなく、存在そのものが見世物であるかのようである。つまり、自分は捕えられた雪女を観ているのだという「体」が必要なのかもしれない。

昨日はブルーノート初体験。今回はorange pekoeの単独ライブということもあるのか、以前ほど敷き居は高くない様子だった。カジュアル席だったが舞台を左側から少し見下ろすかなりいいシート。オリーブでぬるめのミラービールを飲みながら聴く。ファーストしかきちんと聴いていなかったが、かなり盛り上がったと思う。スタンディングの方がよかったんじゃないかと思うほど。ボーカルの女性はセカンドセット目だったにも関わらず本当に楽しそうに歌っていて、衣裳と音楽がよく合っていた。エレクトリックピアノの音がいい。