新刊本を読む

今日読んだ本、鹿島田真希『ナンバーワン・コンストラクション』
「建築史家の教授、彼に弟子入りする小説家志望の青年、教授が片思いの愛を捧げる少女、少女を残酷に支配する婚約者の美青年。現代の都市の話題の建築を舞台に、交わされる、永遠、生と死、愛、芸術を巡る会話。男と女、男と男、変質していく恋愛関係。」
時間潰しに寄ったジュンク堂で購入し、一息に読み上げたが、読みながら遠藤周作の『真昼の悪魔』を思い出していた。記憶が定かではないが、美人の女医が、自分の内にどうしようもなく存在する悪意を認め、「悪行」や事件を引き起こす、といった話だった。その矢面に立つのが幼い男女の子どもだったことを強く覚えている。『ナンバーワン〜』に登場する美声年N講師も、悪意にも似た破壊の願望を強く抱いている。でも二つの小説は全く異なる。『真昼の悪魔』が、宗教(キリスト教)的なテーマを扱っていることを抜きにしても、N講師の悪意は罪悪の観念、倫理的規範との関連で反省されないからだ。それらは全てN講師の「内面への不信」といった、自己回帰的なベクトルしか持っていないようだ。うーん。この辺りは特に会話の箇所から感じたこと。地の文特に終盤で語られる建築、都市、町と内面の象徴的な類似関係は面白かった。作中に登場する話題の建築とは、同潤会アパート表参道ヒルズ東京カテドラル聖マリア大聖堂中銀カプセルタワービル、ディズニーランドなど。読書欄の新刊を読むのは楽しい。

終電で帰ると、タクシー乗り場に我れ先と急ぐ人が多い。今日も駅に着いた途端、年齢もちがうサラリーマンが三人、エスカレーターを一直線に駆け上っていった。