信じるんだ、13億人のマンパワーを!!

「激富2005年度公演 BARREL」に行く。会場は日本橋のインディペンデントシアター2ndというところ。でんでんタウンのど真ん中にこんな場所があるとは。かつて天安門事件でともに中国の民主化を目指した男女(中の兄妹・日の男・米の女)は、10数年を経、日本経済崩壊の危機を前に再会する。亡命生活の苦難から思想を失う男W、かつての恋人Kや同士のため諜報活動に身を売りそれでも中国国民の慎ましやかな生活を祈るWの妹S、日本人のもつ技術力を信じ、他国とも理想的な信頼関係を築く日本人ヒーローK、ひたすらKを追い掛けあっと言う間に身を持ち崩す女C。もちろん紆余曲折はあるものの最終的にはKの誠実な行動とSの信念が生き残り、希望の種が捲かれる...。ということになる。天安門オイルショックからイラクニート、中国の経済成長など、まるで世界史の教科書のようなキーワードを背景に男女の恋愛が絡んでいるように見えてあんまり絡んでいない。政治的問題に対するメッセージ性はほとんど読み取れない。政治における「否定」表現の婉曲、とか読み込めば見えるかもしれないが、政治はむしろ単なる空間・時間設定だと考えた方がよいような気がする。むしろ気になったのは、ほとんど装置のないステージの上で役者が常に観客側を向いて台詞を吐いていた点だ。これは会話のシーンでも変わらないので、会話でありながら視線は全く平行という奇妙な位置関係を目の当たりにすることになる。(Cか誰かがSあたりを平手打ちするシーンではそれぞれ舞台の左手奥と右手前で観客側を向いた状態で、平手打ち、打たれたジェスチャーを行い、効果音で繋ぐという離れ業であった。演劇ではよく用いられる手法なのだろうか。)
この物語の主人公らが信じるのは国でもお金でもなく民、マンパワーだそうだ。しかしぼくから見れば中国人や日本人のマンパワーより、演劇人のマンパワーを実感するニ時間であった。かなり発電できそう。