2h×2

『盲獣vs一寸法師』(監督:石井輝男)を観る。
冴えない小説家小林紋三が遭遇する怪奇な複数の事件が絡み合い、盲獣と呼ばれる盲の按摩師、一寸法師と呼ばれる住職、その兄の人形師(マネキン人形師?)、裕福な美しい後妻、らの様々な思惑が浮かび上がる。「子供の体に大人の首がのった」一寸法師が、人の手足を切断して運ぶ姿もおもしろいが、なにより興味深いのは盲獣が殺害した女を石膏に塗り込め、それが「触覚芸術」であること証明しようとする箇所である。彼の「触覚芸術」は部屋壁全体に広がる手足と女性の胸のオブジェ群といったものである。盲獣との陰湿な生活に堕ちるレビューのスター水木蘭子の語り、
「わたしは今までどうしてこんな楽しい世界を知らずに過ごしてきたのだろう。ああ、目のある人たちに教えてやりたい。可哀想な目開きさんたち。おまえさんがたは、このなんとも言えぬ、甘い、快い、盲目世界の陶酔を味わったことがないのだ。彼らこそこの世をお造りになすった神様の第一番の寵児なのだ。」
この閉鎖空間には耳や唇のオブジェも存在するが、数量の上で圧倒的に優位なのは手足と女性の胸である。盲獣は触ることによってのみ世界のほとんど全てを認識せざるを得ない。手足と胸は触る/触られるという「行為」と「対象」が最も身近に結びつく形態かもしれない。
好奇の視線に晒され続けた男、何も視ずそのため視られること(を感じること)もない男。
盲獣VS一寸法師 [DVD]